“生き物が好き”を貫いた先に広げていく未来とは

更新日:9月28日



今日の社会は変化のスピードが早く、従来の常識が通用しない世の中になるとも言われています。そんな予測の難しい社会の中で未来を担う子どもたちが幸せな人生を歩むには、「自律力」「社会を生き抜く力」など“非認知能力”を育むことが大切だと、ダヴィンチマスターズは考えています。

しかしながら、非認知能力は点数化や数値化ができる認知能力に比べて明確な“ものさし”がなく、保護者の方にとっても「非認知能力が高いと子どもは将来どうなるのか?」といった具体的なイメージがつきにくいかもしれません。

そこでダヴィンチマスターズでは、「好きなことに夢中になり探求し続けている」「自分の力で自分の未来を切り拓いている」学生や社会人の方にインタビューを行い、彼らの幼少期や家庭の環境、夢中になれるものとの出合いや将来の展望について伺いました。



“生き物が好き”を貫いた先に広げていく未来とは


京都大学大学院 地球環境学堂 環境マネジメント専攻 許斐有希(このみ ゆうき)さん


今回は幼い頃から生き物が好きで、「昆虫の研究がしたい!」と京都大学へと進んだ許斐さんにインタビューを行いました。幼少期の家庭環境や親御さんの教育に関する考え方、京都大学への進学や卒業後の進路などについてお伺いしました。好きなことを仕事にできる人はごく限られている世の中で彼女が見出した活路とは。


小さい頃から芽生えていた“生き物が好き”という感性


 私は京都大学大学院の地球環境学堂というところで、環境マネジメントを専攻しています。私自身は生物系の研究にあたっていますが、同じ学堂のなかには経済学的な見地からアプローチする人や化学系統の方などがいて、実に様々な研究が行われています。留学生もかなり多く、彼らの環境に対する問題意識の高さにも刺激されながら、日々授業や研究に励んでいるところです。


 幼少期を辿れば、小さい頃からずっと生き物が大好きな子でした。大阪の市街地に住んでいたので今思えばまわりに生き物が溢れていたわけではなく、誰もがよく見かける生き物しか見られなかったのですが、それでも公園の虫取りにはよく連れて行ってもらったのを覚えています。


 片や机に向かう勉強はと言うと、これもまた嫌いではなかったですし、小学校から私立に通っていたので、受験するのも当たり前という環境で育ちました。まわりは優秀な人たちが多かったので、ずば抜けて勉強ができたわけではありませんが、算数や理科は当時から得意意識があったように思います。



目指すからにはより良いところへ、京都大学という目標への強い志


 時が流れて大学受験を迎えた際、真っ先に思ったことは「昆虫の研究がしたい」ということでした。関西でそれができる大学を調べたところ、京都大学かもう一校の二択とわかって。それならば京都大学をめざした方が良いだろうと、そこで心を決めました。


 実はこの時点で高校3年生になる手前くらい。それまではバンド活動に情熱を注いでいましたから、正直、早いスタートではありませんでした。学力も決して京都大学に見合うものではありませんでしたが、“受かりそうにないから挑戦しない”という選択肢は自分の中になくて。目指すからには挑戦あるのみ、その軸がぶれるのも嫌なので、最終的には併願校も受けず、一浪を経て合格という二文字を手に入れました。


 そんな私にとって有難かったのは、親が一切口を出さず、「あなたの好きなようにしたらいいよ」と応援してくれたこと。父親にいたっては進路に対してまったく介入をしてきませんでしたが、小さい頃に公園へ虫捕りに連れて行ってくれたのは、いつも父。ギターの弾き方を教えてくれたり、ゲームを一緒にしたり、私が好きな物は父から教えてもらったことが多いですね。


 母親も受験が近づくと成績を心配してくれたことこそありましたが、例えば「生物」「昆虫」といった将来が一見不透明な進路にも何も言ってくることはありませんでした。そこは自分自身の意思を貫けた大きな要因にもなりましたね。


 世間的には、よく将来を見据えた進路選択がもてはやされますが、私自身は大学は勉強したいことを勉強するために行くところだと考えていて。もちろん様々なバックグラウンドや教育方針があることは重々承知していますが、個人的に大学での学びを将来の仕事とセットで考えるのは好きではありませんでした。せっかく行った大学ならば、単位を取るために授業を受けるのではなく、楽しく勉強ができるところ、好きなことを極めるための空間にしたかったのが大きいです。



好きなことを続けられる未来に向けて私が打った布石とは


 学部の4年間を経て、現在大学院では生物の保全に役立つような研究に取り組んでいます。なかでもDNAを扱う研究に従事していて、16,000を超える塩基の中から、どの部分を見ればどの種であるかがわかるか、ということを探究・整理しています。


 もちろん今でも専門の人なら見極めがつくのですが、それだと密漁や絶滅危惧種が保護されるのは空港の検疫など、専門家がいない場所が多いので、スピーディな判定と生き物の保護などには繋がりにくい現状があります。鳥類はすでにデータベースが出来上がっており、殊に整備が行き届いていないイモリやサンショウウオなどの有尾類においてもデータベースが整うことで、誰もが速やかに種を判断できるような未来に貢献するのが狙いです。


 私のような分野もそうですが、生物学系の研究職は絶対数が少なく、理科系科目の教員にならなかったとすると、将来の選択肢というのはかなり狭まってくるのが現実。正直なところ、「好きなことだけやっていれば大丈夫!」と大手を振って言えないのが私自身ももどかしいところです。ただ、そこを嘆いているばかりでは何も変わりませんし、まずは“私から”、そして私のまわりから変えていきたい。今は強くそう思っています。


 実際に私はどこかに就職する道を選ばず、新しく環境関連事業を自身で立ち上げることにしました。先ほど“私から”と言いましたが、正直周囲を見ただけでも、私よりも遥かに生き物に詳しい人が世の中にはたくさんいらっしゃいます。そういう方々がアカデミックな研究職に就かなかったとしても、持ち前の学術知識、何より「生き物が好き」という気持ちを活かして仕事ができるような未来を創造していきたいと考えています。


 具体的には小学生を対象としたフィールドワーク事業を行い、田んぼなどにいる「イモリ」を始め、実際に生息する生き物を生で見る機会を積極的に作っていこうとしています。かつ、「これがイモリですよ」と一方的に見せるのではなく、「こういう生き物がいるから探してきてごらん」と、自分で見つけ出すところから体験してほしい。


 そのなかできっと、イモリは一種類だけじゃないことにも気づくと思いますし、生息場所について知る機会にもなる。さらに先述したような生き物に詳しい人が各フィールドに配置されていれば、その人たちから色々な話が聞けて、知識や関心が広がると思うんです。


 それと将来的には、中学・高校に出向いて理科の授業を行うような取り組みも行っていきたいです。生物学系に詳しい人が出張型で実習を行うなど、歓迎してくださる学校もあると思っています。実はすでに母校で実習を行い、かなり盛り上がって好評をいただくことができました。



“受験のため”に捉われない「ダヴィンチマスターズ クラブ」に寄せて


 今でこそこうして、好きなことを極めてきた過程や具体的な取り組みを話せるまでになりましたが、自分がやりたいことを事業として行っている企業には出会えておらず、自ら事業化してその機会を創出しなければならなかったのは事実ですし、今の日本で好きなことを仕事にできる人がほんの一握りである現実も理解しています。


 ただ、私自身は好きなこと・得意なことには必ず意味があって、何かしら役に立つチャンスが秘められていると信じています。“勉強”というと、どうしても受験のため、問題を解くため、となってしまいがちですが、それらはあらかじめ提示されている疑問であり、決められた公式を使うもの。普段、当たり前に目にしている物事に対して「なぜ?」と本質的に考えられる視点を持ち合わせてほしいなというのが私の願いです。


 そうした観点からも、「受験のため」というところに捉われないプログラムを実施する「ダヴィンチマスターズ クラブ」には、大きな意義を感じています。実際に授業を行わせていただいたところ、やはり数値化できる勉強を教えるのに比べて、どのようにして保護者の方に効果や必要性をご理解いただくかなど、難しい側面は感じました。


 ただ、自分が興味を持ったことや、やりたいと思ったことを信じ抜いたり、そのためにできることを具体的にやってみたりすることは、必ず将来、興味の対象が変わったとしても活かされてくるプロセスだと思っています。


 まずは私自身が手掛け始めた事業を成功させて、皆さんへ明るく「好きなことだけやっていれば大丈夫!」と言える未来に向けて頑張ります!



【プロフィール】 許斐 有希(このみ ゆうき)

京都大学大学院 地球環境学堂 環境マネジメント専攻 生物多様性保全論 1997年大阪府出身。幼少期より昆虫など身のまわりの生き物に関心を持つ。

またギターやピアノ演奏、イラスト描きやゲームなど多趣味な一面も。

2021年4月にフィールドワークの事業「生き物クラブ KONOMI」を立ち上げスタート。

2021年7月にオープンした「ダヴィンチマスターズ クラブ」ではコーチとしても活躍中。


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